役員報酬の考え方〜定期同額給与〜

☆定期同額給与について・・・

現在の税法では役員報酬は原則的に経費として認めておりません。

ただし、支払った役員報酬のすべてが経費として認められないのではなく、利益の調整、すなわち税金を増減させる目的で支給されたもの以外については、税務上の経費として認めています。

「今年は利益が出そうだから報酬を高くして税負担を減らそう」
「思ったより売上が伸びないので報酬を減らそう」
というように、期中の経営状態によって役員報酬額を増減すると、増減させた金額に応じて課税されることになります。

税法では、役員に対して毎月定額で支給する給与を「定期同額給与」と呼びます。
そしてこの定期同額給与に該当すれば支給した役員報酬は税務上も経費として認められることになります。

定期同額給与に該当するにはいくつかの要件を満たす必要があります。

◎1年間、1月以下の単位で定期的に・・・

1月以内の期間を単位として規則的に支給されていなければなりません。
例えば非常勤の役員に、年4回に分けて報酬を支払ったとしても、1月以内の期間を単位としていないことから定期同額給与には該当せず、全額が税務上の経費として認められないことになります。

◎毎回の支給額が同額であること

年間を通して、1月以内の期間で支給される金額が同額でなければなりません。

☆改定が可能なケース(定時改定)

上記のように、定期同額給与に該当するためには毎月定額を1年間継続して支給する必要がありますが、要件を満たすと期中において支給額を変更することが可能となります。

①期首から3カ月以内の改定であること
②改定した事業年度内において、改定前の各月、改定後の各月の支給額が同額であること

定時株主総会は通常決算終了後2~3ヶ月以内に行われますが、その際に役員報酬の金額を改定する決議を行うことになります。

例えば、役員報酬の支給を毎月25日としている会社(3月決算)が5月26日に定時株主総会を開き、役員報酬を6月25日に支給する金額から増額する取り決めをした場合、増額前後の支給額が定期同額給与として認められます。

設立の場合は、設立後3カ月以内に役員報酬を決定する必要があります。

2月2日に設立登記が完了した場合は、その3か月後の5月1日までに株主総会を開いて報酬額を決議しなければなりません。

設立後の経営状態が当初の予定通りなのかそうでないのかを判断しながら年間の支給額を決めなくてはならないため、事業計画を見極めながらの検討が必要です。

☆改定が可能なケース(臨時改定)

代表取締役が急に亡くなったため他の取締役を代表とするなどの地位の変更があったり、役員の職務内容が大きく変わった場合に役員報酬額を増減させたときは、それが利益調整と認められないものに限り定期同額給与として取り扱われます。

☆改定が可能なケース(業績が悪化した場合)

事業年度の途中で予想以上に業績が悪化したことを理由に定期同額給与を改定することをいいます。
業績が悪化したことを理由とすることから減額改定のみが認められ、増額は認められません。

業績悪化の例としては、主要な取引先の倒産などにより財務諸表の数字が相当程度悪化したケースや、業績悪化により銀行からの借入返済をリスケするなどのケースが該当するものと考えられます。

役員報酬減額後の予測を数字に落とし込み取引先が納得できる経営計画書を作成したり、銀行との打ち合わせの際に使用した返済計画表などを保管するなど、減額となった理由を第三者がみても明らかにしておかなくてはなりません。

☆おわりに・・・

現在の税法の役員報酬の定期同額給与についてご説明しました。
役員報酬は一定のルールに従って支給することが求められるため、会社運営を有利に進めるためには支給方法を知っておく必要があります。

最後までお読みくださりありがとうございます。
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